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最高裁判所第二小法廷 昭和40年(オ)957号 判決 1966年3月11日

上告人(控訴人・被告) 日本コロムビア株式会社

被上告人(被控訴人・原告) 城北電気株式会社

被上告人(被控訴人・原告) 栗原正男

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人杉山朝之進の上告理由

第一点について

<訴訟法上の問題につき省略>

同第二点について

<原審の事実認定を問題とするので理由なしとする>

同第三点について

趣旨は、原審が訴外加賀美鏡雄の上告会社に対する原判示小切手および手形の振出による本件売掛金債務の内入弁済は被上告人城北電気株式会社代表取締役として、右被上告会社のためになしたものであると判示しつつ、一方において、上告会社の右訴外人に対する催告が被上告会社に対する催告としての効果を生ぜず、もっぱら同訴外人の引き受けた本件売掛金債務の履行を求めるためにのみなされたと判示したのは、理由そごの違法を犯したものであるという。しかし、原審は、右被上告会社の代表取締役である右訴外人から上告会社に対してなされた右小切手および手形による弁済は、特に反証の認められない本件においては、前記被上告会社のためになしたものと認めるのが相当であると判示するとともに、上告会社から右訴外人に対してなされた催告については、その挙示の証拠により、同訴外人に対し同訴外人が引き受けた本件売掛金債務の履行を求めるためになされたことを認定しているのであるから、一は右被上告会社の行為であり、一は同訴外人個人に対してなされた行為であると判断されたからといって、これに所論のような理由そごの違法があるものとなすことはできない。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するに帰するものであって、採用するに足りない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)

上告理由

上告代理人杉山朝之進の上告理由

原判決は、次のように判決に影響力ある法令違背と判決理由に齟齬があり破棄されるべきである。

第一点<訴訟上の問題につき省略>

第二点<結局、第三点と同じ理由につき省略>

第三点原判決は次のように理由にくいちがいが存する。

一、 原判決は一方では、時効利益の放棄に関する判断において、被上告人等の「昭和三六年二月二〇日の金一八万円の弁済は、調停手続中の合意にもとづき加賀美個人が行った」旨の主張を退けて、加賀美が当時被控訴会社(被上告会社)の代表取締役であったこと、加賀美が右小切手及び手形を振出し、これを支払ったのは前記九段の土地につきなされた根抵当権設定登記の抹消をうけるためであり、その頃その抹消登記がなされたことは当事者に争がない。

右事実によれば、後記のように特別の反証の認められない本件では、加賀美は被控訴会社(被上告会社)の代表取締役として被控訴会社(被上告会社)のため前記小切手および約束手形を振出し且、これを支払ったものと認めるのが相当である。

右小切手および約束手形の振出並びにその支払が被控訴人ら(被上告人等)主張の如く控訴会社(上告会社)が加賀美を相手方として申し立てた後記調停事件の係属中に成立した合意に基いてなされたとしても、この事実だけでは前記認定を覆えすに足らないし、その他に右認定を左右するに足る証拠はない(原判決六丁裏三行目乃至七丁裏五行目)旨認定している。

しかし、他方、時効中断事由たる催告に関する判断においては、調停手続中の上告人の催告は加賀美個人が引受けた債務につき行われたものと認定している(原判決八丁裏二行目乃至四行目)。

二、 右金一八万円の弁済は、上告人が加賀美に対して申立てた調停手続中の合意にもとずいて、被上告会社が行ったものであってその調停の相手方は加賀美個人であった。そしてその調停手続中の加賀美の言動は被上告会社の代表取締役としての行動であり、従って、右金一八万円の弁済は、調停手続中の合意にもとずくものであるが、被上告会社が行ったものであり、この点について被上告会社即ち加賀美という、会社と個人とは一体関係にあったものであり、右弁済は被上告会社が行ったものであるとする原判決の判断は、個人的会社の社会的実態を直視した正当な見解である。

かかる判断を前提に示している以上、右調停手続中における(右金一八万円弁済後)上告人の催告は、加賀美個人のみでなくして代表取締役たる加賀美鏡雄を通して被上告会社に対して本件売掛債権の催告を行っていたものと判断されなければならない。

三、 ところが原判決は、調停の相手方が加賀美個人であるからとして、加賀美個人のみに対する催告としている。これは表面的、形式面にのみとらわれた見解で、先の、個人的会社の社会的実態に対する判断の尺度を用いることのない結論である。

このように、原判断は、先の判断に用いた尺度を必然的に後の判断に用うべきところこれを用いることがなかったのである。

この点において原判決は理由の齟齬あるものといわなければならない。

以上

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